闇の子供たち
先ず最初にお願いしたいことは、この映画の公開劇場はかなり限定されていますが、是非劇場に足を運んで見て欲しいのです。
ほとんどの日本人が知らない、また知りたくない映像がそこにあります。幼児売買、幼児虐待、幼児買春、臓器売買、と目を覆いたくなるようなシーンの連続で、その描写はあたかもドキュメンタリーであるかのようにリアリズムに満ちていて、ここまで具体的に描写する必要があるのかと思うほど見る者に強烈な印象を与える映像です。
正直言って、おも〜〜い映画です。 出来ればこんな世界は、見ずに避けて通りたいと思われるかも知れません。
でも、この様な闇が存在する事を知るために、また、そこにある厳しい現実を知るために、一人でも多くの人に実際に見て貰いたい映画なのです。
ストーリーの部分部分においては実際にはあり得ないであろう不自然さを感じるところもありました。
梁石日による原作小説では、NGOの音羽恵子(宮崎あおい)が主人公であるところを、映画では新聞記者、南部(江口洋介)を中心に組み立て直されています。原作を読んではいないのでなんとも言えませんが、これは幼児の性を商品化する闇組織の存在を追求し、過酷な現実をあばく社会派作品としては、このように主人公を入れ替えたほうが奥深く闇の世界に入り込めると、阪本順治監督が考えたからであろうと思います。
ただ、江口洋介、佐藤浩市に加えて、人気スター、宮崎あおいや妻夫木聡を出演させたことは、その熱演ぶりはともかくとして、単に客寄せ、人気取りのためなのかと感じたこと、それと、この映画を深刻な問題提起だけで終わらせるとドキュメンタリーの域を出ないことから何かストーリー性を持たせようとしたのでしょうか、監督の解釈を加えた原作と異なるラストの展開にはなんともすっきりしないものを感じ、後味の悪さが残りました。
キャスト&スタッフ
監督: 阪本順治
原作: 梁石日
脚本: 阪本順治
音楽: 桑田佳祐『東京奇譚』
出演: 江口洋介 宮崎あおい 妻夫木聡
. . . .佐藤浩市 鈴木砂羽 豊原功補
. . . .塩見三省 プラパドン・スワンバーン プライマー・ラッチャタ
予告編 (WMP)
500k . 1M . . (PG-12指定)
あらすじ 「値札のついた命」。
「人はお金では買えない」と言いつつも、現実では人間の傲慢さと欲望により、タイにおいては幼児売買や臓器密売など、罪のない幼い子供たちが安易に金銭取引されている。
そんな中、タイ・バンコク駐在の新聞記者の南部(江口洋介)は、東京本社から「日本人の子供がタイで行う臓器移植について」の調査を依頼される。人身売買、臓器密売の実態について闇ルートで聞き込みを始めた南部だが、臓器密売の元仲介者を通して、臓器を提供するのは“生きた子供”であり、移植手術の際に生きたまま臓器をえぐり取られるという衝撃の事実を知る。
一方、バンコクの社会福祉センターではNGO職員、音羽恵子(宮崎あおい)らが1人でも多くの子供を児童売春の地獄から救おうと活動していた。
親に売り飛ばされ、欧米人や日本人の観光客にいたぶられ、病気になればゴミ山に捨てられる「闇の子供たち」。
南部は新人ボランティアの音羽やフリーカメラマンの与田(妻夫木聡)らとともに調査を進め、事実を暴き、傷つけられている「闇の子供たち」を救おうとする。が、救おうとすればするほど、残酷な厳しい現実が彼らの前に立ちはだかる……。