代理出産の悲劇

北京五輪の開幕した日、中国では産み月のお母さん達がこの日に合わせて赤ちゃんを出産したいと、病院で産婦人科の先生方を大分困らせたと聞きました。

婚姻届けも、北京市では事前予約を受け付けて5日までに既に2万組もの予約があったと言います。

この日は08年8月8日、末広がりの八並びの縁起のいい数字と五輪の開幕が重なっての現象でした。

日本でも例年は夏場の受理件数は少ないらしいですが、各自治体ともこの日は窓口が開いた直後から婚姻届を手にしたカップルが相次いで婚姻届ラッシュとなったようです。神戸の中央区役所ではお昼までで既に普段の3倍にも達したようです。

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ところでこの日各新聞に、日本人夫婦がインド人女性に代理出産を依頼して誕生した赤ちゃんが、インドを出国できないでいるというニュースが掲載されていました。

子供が出来ない45歳の日本人男性医師と41歳の日本人妻は、昨年11月にインド人女性と代理出産の契約をして、夫の精子とドナー提供の卵子体外受精させ、受精卵をこのインド女性の子宮に移植、今年7月25日に女児が誕生しました。

しかし、その間にこの夫婦は離婚し、元妻は女児の引取を拒否してしまいました。代理出産したインド人女性も契約どおりに出産後女児を残して帰宅してしまいました。

元夫は女児の引取を望んでいるらしいですが、インド国籍を持つこの子を日本に連れて帰るためには、先ず養子縁組の手続きを済ませ、この女児がインドの旅券を取得してからの出国となります。ところがここで問題がおこりました。インドの法律では、結婚していない男性は養子縁組が出来ないらしいのです。


今は元夫の母親(70)が病院でこの女児に付き添っているらしいですが、これは代理出産がもたらした悲劇の一例に過ぎません。

子供のできない夫婦が当人どうしの精子卵子体外受精させ、妻の子宮で出産するなら、仮にこの夫婦が離婚しても、普通に妊娠した夫婦が離婚する例と、なんら変わりはありませんが、どちらか片方の遺伝子しか持たないこんなケースや、代理出産する女性に何か問題が生じた場合には、必ずしも事はスムーズに運ばず取り返しがつかない状況にいたることもあり得ます。

そうなると、悲劇の主人公は、その夫婦でも、代理出産の女性でもありません。本当に可哀相なのは生まれてきた赤ちゃんであり、こんな理不尽でアンハッピーなことはありません。

私は代理出産は反対です。子供との生活を持ちたいなら、或いは子供を育てたいなら、里親制度もあります。親のエゴで赤ちゃんに負担をかけるようなことだけは避けなくてはいけないと思います。