いじめ・・・定義よりも体制づくりを

「自分より弱い者に対して一方的に、身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、相手が深刻な苦痛を感じている場合」

これは従来の文部省の「いじめ」の定義です。

これを平成18年度より、「当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的・物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの」と変更しました。

「いじめ」の定義を見直したのは、「自分より弱い」「一方的」「継続的に」「深刻な」など従来あった限定的な条件を削ることにより、より被害者側の気持ちを重視したところで「いじめ」と判定する実態をこれまでより幅広く把握する狙いからとしています。

ただ、「どこまでをいじめに含めるかがあいまい」で、教育現場では調査の精度を疑う声が根強いと日経新聞に書いてありました。

確かに定義がどうであれ、「いじめ」の実態が変わるわけではありません。統計をとる上において「いじめ」と判定する範囲を広げただけであると思います。

統計の中に、いじめられた時に「学級担任に相談」する児童生徒の数が最も多く、学校側も「本人からの訴え」により「いじめ」を知るケースが最も多いようです。

具体的には、本人と保護者からの訴えによるものが約39.9%を占めており、担任の先生がみつけたのは21.2%、学校側のアンケートによるものが23.5%となっています。

学校側で発見される数字が全体の約半分しかないことが非常に問題であると思います。

統計は統計でいいですから、学校側、特に担任の先生は個々の生徒の行動・言動をもっと注意深く見守って子供達が発信しているサインを見逃さないでほしいと思います。

「自分の教室ではいじめはない」と思うのではなく、先ず「いじめがある」ことを前提にして児童生徒に接するくらいでないとなかなか発見出来ないと思います。

もちろん保護者が子供の行動に気がつくことも大事なことで、「いじめ」をしている子供の保護者の約7〜8割は「自分の子供は人をいじめたことは無い」と思っており、担任の先生・保護者ともに子供の「いじめ」についての認知が非常に低すぎるのではないかと思います。

定義はともかく、国は「いじめ」に対してもっと真剣に向き合い、問題をかかえた児童生徒からのサインを見落とさないようにして大事に至る前に解決できる、そんな体制づくりに努力をして欲しいと思います。



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子どもを守り育てるための体制づくりのための有識者会議の「いじめをなくそう」子ども会議で、子ども達から出された主な意見です。

○ いじめられている場合は、誰にも相談できないことが多い。自分を信じて支えてくれる大人の存在が必要。「おはよう」の声掛けからでもいい。大人の助けを待っている。

○ 教師はいじめられている者の味方になって欲しい。子どもからの訴えに対して、些細なことと思われても、ないがしろにせず、きちんと対応して欲しい。

○ 教師が一緒に考え、問題解決に親身になってくれることで勇気が出る。教師は子どもをしっかり支えて欲しい。生徒と向き合い、愛情とプロ意識を持って欲しい。教師が子ども1人1人と話しやすい雰囲気を作って欲しい。限られた学校生活の期間に出会う教師との関係は大切。

○ 学校はいじめを隠すようなことがないようにして欲しい。日頃から保護者と連絡帳などを介して密接に連絡をとり、問題があったときは一体となり対応して欲しい。

○ いじめはどこにでもあるが、それに対してどのように対応するかの方が重要。問題が起こったときには、スピード感を持って積極的に対応して欲しい。

○ 校長先生の姿勢や意識がとても大切。いじめは卑劣なことで、許されないという強い意志で、学校全体が一体となって取り組む雰囲気を日頃からつくって欲しい。

○ いじめは中学校から増加するとの認識が高いが、その根っこは小学校時代からある。小学校低学年から、いじめに対する適切な指導をしっかりしていく必要がある。

○ いじめを軽く考えないで欲しい。いじめは犯罪にもなることを、いじめる側にしっかり理解させるような対応をして欲しい。いじめる側の親にも責任があり毅然とした対応をして欲しい。

○ 自分を理解してくれる友達の存在は大きい。友達、保護者や教師とのコミュニケーションがもっと活発にされることが必要だと思う。

○ 悩みを聞いて欲しいときにいつでも対応できるいじめ110番のような窓口やスクールカウンセラーを始め、いじめの専門家のような人を学校に派遣して欲しい。

○ いじめる子どもも何らからのストレスを抱えていることもある。それぞれの経験を通して、自己肯定感を持つことができるようにしていくことが大切。

○ 生徒会等が中心となって、子どもが自主的・主体的に継続的にいじめに取り組む活動は、一人一人がいじめを自らのこととして受け止める機会となる。特に、学年を超えた異年齢の者が 協力して行う活動は意味が大きい。


(初等中等教育局児童生徒課生徒指導室)