『言海』の ねこ と、 『広辞苑』の ねこ

広辞苑』が来年1月に10年ぶりに改訂されますね。

今時流行りの「ラブラブ」「イケメン」「うざい」「逆ギレ」など若者言葉から、時代を反映する「ニート」や「メタボリックシンドローム」など外来語、「ブログ」や「顔文字」などの情報通信、その他環境、金融経済関係まで1万語を追加して24万語となるそうです。

出版元の岩波書店の社長は「この10年はかつての100年にも相当」と言っていましたが、『広辞苑』は昭和30年(1955)に初版を発刊した戦後派の辞書です。




これに対して、戦前には大月文彦編纂の『言海』という国語辞典が近代国語辞典の始まりとして一般に認められておりましたが、今日の日経春秋欄に面白い記事がありましたので一部抜粋して掲載します。

 「温柔ニシテ馴(ナ)レ易(ヤス)ク、又能(ヨ)ク鼠(ネズミ)ヲ捕(トラ)フレバ畜(カ)フ。然(シカ)レドモ窃盗ノ性アリ。形虎ニ似テ二尺ニ足ラズ」。戦前の国語辞典『言海』は「ねこ」をこんなふうに説明していた。なかなか味わい深い文章だが、これに芥川龍之介がかみついた。

 猫を「窃盗ノ性アリ」というなら犬は風俗壊乱の性あり、燕(つばめ)は家宅侵入の性あり、蛇は脅迫の性あり、ではないかと随筆に書いている。皮肉屋の芥川らしいけれど、言海がそれだけ親しまれていたということだろう。



その「ねこ」を『広辞苑』で引いてみました。

広くはネコ目(食肉類)ネコ科の哺乳類のうち小型のものの総称。体はしなやかで、鞘に引きこむことのできる爪、ざらざらした舌、鋭い感覚のひげ、足うらの肉球などが特徴。一般には家畜のネコをいう。エジプト時代から鼠害対策としてリビアネコ(ヨーロッパヤマネコ)を飼育、家畜化したとされ、当時神聖視された。現在では愛玩用。在来種の和ネコは、奈良時代に中国から渡来したとされる。古称、ねこま。

「形虎に似て」とも「窃盗の性あり」とも書いてありませんでした。(笑)