信州の鎌倉 別所温泉 安楽寺
黒門
通称「黒門」とよばれる安楽寺の山門には『崇福山』と大きく書かれた扁額が掲げられています。
そしてその傍らにある石碑には「不許葷酒入山門」と書かれています。
葷(くん)とは臭いの強い野菜、すなわちニンニク、ニラ、ネギ、ラッキョウなどのことです。
曹洞宗の戒律で『葷と酒の山門内への持ち込みを禁ず』言い換えれば、酒臭い、或いはなまぐさい人間は山門に入ってはいけないという意味です。
夕べお酒は飲みましたが、ネギやラッキョウを食ったかななんて考えながら、しばらく進むと右手に長い石段が現れます。
石段を登りきると、昔は茅葺きであったものに銅板を葺いたと思われる大きな本堂が真っ正面に建っています。
安楽寺
正式名称、崇福山護国院安楽寺、曹洞宗通玄派のお寺です。
天長年間(824〜834年)に禅僧・樵谷惟仙が開山したと伝えられる長野県下で最も古い禅寺です。
経蔵
本堂の左手に宝形屋根土蔵造りの「経蔵」があります。
この中に設置されている朱塗りの八角形の「輪蔵」(お経を読むために廻転式に作られた蔵)に10年の歳月をかけて中国本を翻訳した有名な「黄檗版一切経」という経本が納められています。
経蔵から先へ進むと路傍にお地蔵様が並んでいます。
さらにその先の杉並木に囲まれた石段を登って行くと、目の前に八角形の三重塔が現れます。
国宝・八角三重塔
鎌倉時代の末頃に建てらた安楽寺八角三重塔は長野県で一番最初に国宝に指定されました。
ふつうの塔は四角形ですが、八角形の塔は日本で一つしか存在せず、中国・宋代の様式を伝えています。
また一見、四重の塔に見えますが、正確には「裳階(もこし)付三重塔」と言って一番下の屋根は庇(ひさし)の役目を果たすものだそうです。
柱は直接地面から立っていて、まわりは板壁です。屋根を支える垂木が扇の骨のように放射状に外側に出ています。こういう建て方を「禅宗様」といいます。
そしてこの塔は、どんな細かなところまでも、「純粋の禅宗様」で造られており、日本では大変に大切な建物とされています。
この日は台風も関東の南海上に去り、雨にも会うことなく別所のお寺をまわることが出来て、心が洗われる思いでした。
ただ気がかりは、天気予報の台風進路図でギリギリ風速25m以上の暴風雨圏内に入っていた神戸の街、いや、我が荒ら屋が吹き飛ばされていないだろうかとそれだけが心配です。