山桜桃 二首



卯月、花の季節に詠む−

 . うすらびに 照りて舞ひ散る 花ゆすら 紅き実待つは 亡き母に似て
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水無月、実の季節に詠む−

 . 想い出づ 紅き実に充つ ゆすら梅 実生の枝葉(えだは)に 古木を重ね
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阪神大震災の前の年、古い平屋建ての木造住宅を取り壊して新しく建て替えました。当時は広い庭にいろいろな生り物の樹木が植わっており、ユスラウメもそのひとつでした。

建て替える前のユスラウメはザルに何杯もの実が穫れ、母はそれで果実酒を作っておりました。

甘くて、色がきれいで、口当たりのとてもよい果実酒で、梅酒やレモン酒なども同時に作っていましたが、その中でも一番人気の高い美味しいお酒でした。

建て替えによって、庭の樹木は全部伐採されることになり、ユスラウメも例外ではありませんでした。

新しい庭はほんのネコの額ほどに小さくなってしまい、古い樹木を移し替えることができません。

それらの果樹の中で、実生(みしょう)で生えたまだ小さな蜜柑や柿、石榴など数種類の幼木がありましたが、そのうちユスラウメとモモの木だけを移植する事にしました。

そして震災から数年後・・・・・母は亡くなりました。

新しい庭で十数年の年月を刻み、今、ユスラウメもモモの木もまだ若木ではありますが、立派な花を咲かせ実を結ぶようになりました。


ユスラウメにしてもモモの木にしても、これらは母の愛した樹木の二代目ではありますが、あらためてその花や果実を見るたびに、今は亡き母と昔あった老木を想い出します。


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母の逝った日は5月2日。 母が好きだった真っ白なハナミズキがちょうど満開で、一枝手折って母の胸に乗せことを想い出しました。 

そして今日6月2日は、たまたま祥月から一月遅れの月忌(がっき=月命日)です。 

この二首を亡き母に手向けて・・・ 合掌