身内を裏切らない・・・その哲学の結果は?

現役の大臣がとうとう自殺にまで追い込まれました。

松岡利勝農林水産大臣は組閣前から疑惑がささやかれていた人でしたが、かつては同じ派閥の仲間であり、安倍首相が父親の晋太郎氏の秘書をしていた頃からの付き合いで、松岡氏の初出馬に晋太郎氏が応援にに駆けつけられなかったことを親子ともども気掛けていたことから、周囲の反対を押し切って農水相に起用したという経緯があるそうです。

「身内を裏切らない」という首相のセオリーのもと、「なんとか還元水」など、疑惑の指摘が出てもその都度首相にかばわれ続け、辞任の時期を自分の判断だけでは模索できなくなったのだと思います。

現に今年初めの柳沢厚労相が「女性は産む機械だ」と発言した時にも、安倍首相は厳重注意をしたものの辞任は思いとどまらせ、本人は何度も何度も陳謝を繰り返し、大臣としての責任を全うすることが自分の任務と弁明し、首相の哲学に追随していきました。

柳沢厚労相の場合は口が災いとなっただけで、まだ絶えられる状況にあったものと思いますが、松岡農水相の場合は献金疑惑や事務所費問題ですべてお金の絡む問題であり批判の対象が柳沢厚労省の場合の内容とは大きく違います。

その上、当日午後からの緑資源機構の官制談合関与で更にお金にまつわる追求を受けることになっていたわけで、本人としては閣僚を守ろうとする安倍首相の考えとの板挟みとなり、農水相を辞めるに辞められない状況に陥っていたのでしょうね。

結末は現役大臣の自殺という最悪の事態となりました。

去年12月に、やはり存在しない政治団体をでっち上げ、「事務所の家賃などを政治資金収支報告書に虚偽記載」をした佐田玄一郎元行革担当相は、さっさと閣僚を辞任してしまいましたが、このように割り切っていればこんな事には至らなかったことでしょう。 

同じく5ヶ月前には、閣僚ではありませんが安倍首相が任命した本間正明税調会長の一件もありました。「愛人との豪華官舎不倫同棲スキャンダル」で、首相は「プライべートな問題」として収拾を図ろうとしましたが、結局は辞任へと追いやられた経緯があります。

逆に安倍首相としては、今後論功行賞で組閣した安倍内閣の中からこれ以上辞任者が出る事だけは、首相の政治資質を問われることにもなりかねず、どうしても避けたいことではあったと思います。そんなこともあって、今回の場合はあまりにも一生懸命にかばい過ぎたことが逆に本人を追い込む結果となったのではないかと思います。

参院選も間近となりましたが、今後野党は安倍首相の任命責任を追求するでしょうし、5000万件を超える公的社会保険料の納付記録洩れの問題とともに、ここへ来て安倍政権は大打撃を受け、今後のかじ取りも厳しくなり、内閣解散も視野にいれることになるのではないでしょうか。

果たして安倍政権はこのイメージダウンから立ち直って、失墜した権力を再び取り戻すことができるでしょうかねぇ。