新古今和歌集によるモノドラマ 〜西垣正信・クラシックギターと和歌との美しい出会い〜

明石海峡大橋のたもとのマリンピア神戸ポルトバザール内に神戸国際画廊があります。世界でも珍しい鋼板琺瑯画家・田中守氏の工房と画廊です。




30年来お付き合いをいただいている女性作家さんが、自誌「二人静」の愛読者をはじめ関係者を集めてのコンサートをこの画廊で開かれました。

右の写真はそのパンフレットの表紙です。 題して・・・
新古今和歌集によるモノドラマ』〜西垣正信・クラシックギターと和歌との美しい出会い〜



和歌とクラシックギターのコラボ・・・どんな演奏会なのだろうと興味津々で出掛けました。

クラシックギターの世界的に有名な演奏家であり、作曲家の西垣正信氏がイギリスのヨークカレッジとイギリス国立古楽センターの委嘱を受けて作曲されたもので、現地ではヨークカレッジの中村久司博士が英訳をされています。




和歌の朗読と西垣氏の和歌に馳せる想いを綴った語りに続く演奏で構成されており、今回はこの朗読を関西在住のカウンターテノール歌手の岡田孝氏が詠い13首を詠まれました。

氏は幼少より日本コロンビアと専属契約を結び数々の童謡のレコーディングを行い、変声後は外務省国際交流基金によるドイツ各地でのコンサートツアーや国内では各国外交官・皇族ご臨席の演奏会の他、各地においてリサイタルを開催し、またテレビやラジオに出演されています。




演奏会が開催された神戸国際画廊は鋼板琺瑯画家の田中守氏の工房で作品の常設展を催しながら、若い作家さんを育てたり、また神戸市民のさまざまな催しなど多用途に行えるように解放された画廊です。

この女性作家さんの個人誌「二人静」の表紙をデザインされていることから今回のコンサートの運びとなったようです。「浪漫派を聞きながら」というタイトルで氏の新作展も同時開催されており、演奏会場の壁を飾っておりました。

演奏会の後のアンコール曲は、今回のモチーフの和歌とは一転して、西垣氏は楽器をギターからリュートに持ち替え、岡田氏は本来のカウンターテノールの高い歌声を披露してくれました。

今日は、久し振りに日頃の喧騒から離れたところですばらしい演奏会に出逢い、至福のひとときを過ごす事が出来ました。800年前の新古今和歌集の和歌と現代の楽器であるギターとのコラボレーションは、あたかも琵琶の音色をも思わせる西垣氏の演奏と岡田氏の際だった発声の朗読によって時代を超えた融合を醸し、これに心から聴き入り陶酔の世界に浸ることができました。


最後に演奏された13首の中から、岡田氏によって朗読された一首と西垣氏のその句に対する想いをここに載せて、私の記憶の一ページにとどめておきたいと思います。中村博士による英訳の歌詞も併せて記載させて頂いたのですが、ブログへの氏の版権の承諾を頂いていないということでしたので割愛させていただきました。
 「窓近き 竹の葉すさぶ 風の音に いとど短きうたたねの夢」 
 −式子内親王


 この歌をよんだ瞬間にイギリスの翻訳者、中村久司先生と私は地球の反対にいて、シェークスピアの完全に同じ一節を連想しました。
それは「テンペスト」の四幕。
・・・わたしたちは、夢と同じ材料で出来ていて、我々の小さな一生は、眠りによってその環を閉じる・・・。
人生はうたたねの夢、と詠う式子内親王シェークスピアはその環をとじましたが、式子内親王はさらに問い、「竹の葉が風に翻弄される音と、うたた寝、そして私の人生と、さてどちらが短いんでしょうね?」の問いかけ。式子内親王、彼女は私にとっては今も生き続ける人なのです。


このコンサートを開催された私の友人である小説家については、右のメニュー欄に二人静のリンクを貼っておりますので、どうぞそちらからご覧下さい。