「赤ちゃんポスト」は、子どもの命を守るのか、それとも育児放棄を助長するのか

厚生労働省が22日に、「現行法では明らかに違反とは言い切れない」という見解を示しましたね。これを受けて、熊本市は同市慈恵病院が申請している赤ちゃんポストこうのとりのゆりかご』を認める方向で最終調整に入りました。

これに対し、安倍晋三総理大臣は「匿名で子供を置いていけるものを作るのがいいのかどうか、私は『ポスト』という名前に大変抵抗を感じる」と述べ、反対する考えを表明しました。

日本経済新聞によりますと、政界の中でも「法律以前に、親が子を捨てるという問題について考えるべき」(塩崎官房長官)という見解から、「昨今の情勢から緊急避難的にやむを得ないかも」(民主党松本政調会長)の容認論まで、賛否両論があるようです。

赤ちゃんポストを巡っては、「虐待されたり殺されたりするより命が助かっていい」と指示する人たちと、反面「いざとなったらポストに入れればいいという安易な考えが捨て子を助長しかねない」との批判をする人たちがいます。

また法律の面から見ても、赤ちゃんを安易にポストに入れることことが「児童虐待防止法の虐待」にあたらないのか、「保護責任者遺棄罪」とみなされないのか、また病院はその「保護責任者遺棄罪のほう助」にならないのかなどの問題も発生します。

難しい問題ですね。

ドイツでは既に6年前から「赤ちゃんポスト」が設置され、現在は80近い施設があると言います。

逆に、アメリカの一部の州では、買い物で車に子供を一人残しても、また、ベビーカーに乗せた赤ちゃんの側を離れた時点でも「幼児虐待罪」が適用されて親は検挙されると聞きました。

慈恵病院の蓮田理事長は、「誤解されやすいが、『こうのとりのゆりかご』は、あくまで赤ちゃんの生命を守るための緊急避難の手段。ゆりかごに置いた後でも、母親が名乗り出て了解すれば、里親の元に行くのも早い。赤ちゃんさえ無事なら、母親にも冷静に考える時間ができる」(読売新聞)と、言っています。

20年ほど前にも今回の『こうのとりのゆりかご』に似た『天使の宿』という施設が群馬県にあるとテレビで放映されていました。フジテレビ「特ダネ」の番組では2006年11月に、群馬県前橋市・駆け込み寺「わらの会」を取材しました。それによると、1986年4月、日本初の赤ちゃんポスト「天使の宿」が養護施設の敷地内に設置され、置き去りにされた赤ちゃんを施設側が保護し育てていたというお話でした。

普段は無人で誰かが子供を預けて照明をつけると職員が引き取りに行く仕組みで、活動中は14人(現在も存命)が収容されましたが、ある時「天使の宿」に置いて行かれた捨て子を職員が気がつくのが遅れて、収容される前に凍死をしたというい事件が発生し5年間の活動は幕を閉じたということです。

痛ましいお話ですね。折角の施設の善意が裏目に出てしまった事例です。


今、新たに「赤ちゃんポスト」の設置をめぐって、子どもの命を守るのか、育児放棄を助長するのかと賛否両論かまびすしい事態となっています。

あなたは賛成ですか。それとも反対ですか。