内部告発と企業の危機管理

情報の伝達が著しく発達した今、ちょっとしたことが命取りになるケースが非常に多くみられます。

特に企業においては、一部門の、或いは一個人の不注意が企業の破滅を招きかねません。これは大企業であっても、中小企業であってもまったくおなじです。

食品業界を例にあげますと、「食の安全」の御旗のもと、法の整備が急速に進み、遺伝子組み換え原料の表示やアレルゲン物質の表示、原産地の履歴(トレーサビリティ)・・・と食品の表示はかなり厳しいものとなってきました。そして無認可物質の使用有無や農薬などの使用基準等においてもその検査や違法取締りは今までとは比較になりません。

食品業界では、第二の雪印にならないようにと、こぞって国際的な品質保持規格「ISO9001」や食品業界のマネージメントシステム[ISO9000」、食品安全を目指す「ISO22000」、そして食品製造業における食品の安全性確保と保証のシステムである「HACCP」の認証等を取得し、安全管理面、品質管理面において必要以上の神経を使い、事故の防止や法の遵守に渾身の注意を払い、マスコミや消費者からの疑問や問い合わせにはかなりの神経を使っているのが現状です。

殆どの食品会社は、常にピリピリと神経を尖らせ、このような必要以上の過酷な管理をしているのですが、残念ながら、反面においては消費期限が過ぎた原料を平気で使用したり、消費期限を改ざんしたり、或いは衛生面で廃棄をしなければならない製品を流通させたり、異物が見つかったロットを市場から回収しなかったり、これでも食品会社なのかと信じ難いずさんな企業があることも事実です。

このようないい加減な企業の隠蔽事実が発覚する状況は、検査機関やマスコミ、或いは消費者から提起されることは稀れで、殆どの場合が企業内部に精通した従業員からの内部告発が主流になってきており、昨今の風潮として取り立てて珍しくもありません。むしろ内部告発によって企業が破綻している例は食品業界に限らず、すべての業界を通じて多々あります。

企業はどうして危機感を持たないのでしょうか。私にはまったく理解ができないところです。今回の不二家やおたべのように、国内でも名の知れた企業にして然りです。大企業のおごりなのでしょうか。もし、こういう事実が発覚すれば、企業の存続は難しいであろう事は、過去の雪印の例を見てもあきらかで、素人の目からしても分かるはずなのですが・・・。

この内部告発は企業側にとっては誠に厄介なものですが、危機管理を怠り、或いは甘く見ている企業ほどこういう事態に陥ることが多いということを企業のトップはもっと認識するべきです。人の口に戸は閉(た)てられないのです。いい加減なことをしていると内部告発をされるであろうと常に懸念して、それ以前に告発をされない安全管理対策を講じることが企業自体を守り、また、そうあるべきことが企業のモラルであるとも思います。

食品業界を例にとって書いてきましたが、どの分野の企業であっても同じことが言えます。頭を下げて謝ってすむうちはまだいいですが、世間はそんな甘いものではないことをもっと認識するべきだと思います。経営者はじめ管理職側にある人は、相当な危機管理をもって企業を守らなければ、どんな企業であっても破綻という二文字から遠ざかることは出来ないでしょう。