「約束」

[デュエットさんの記事からTB]

三輪明宏さんが悲しくも力強く情感をこめて歌い上げる「ヨイトマケの唄」は、ここしばらく聴いていませんが、この歌は胸にジーンとくるものがあり、私の好きな曲の一つです。

もう一曲、これも最近聴いたことがありませんが、雪村いずみさんが昔歌っていた「約束」という歌です。ほとんど朗読に近い、語り口調の歌詞の長い歌ですが、はじめて耳にした時の衝撃は言葉では言い表せません。ピアノの伴奏だけの語りかけてくる歌詞に、当時涙が溢れ、心にしみる思いをしたことを思い出します。


約 束

(1965年)

藤田 敏雄 :詞
前田 憲男 :曲
雪村 いずみ:歌

その日 ぼくが石けりしてると 

パパが家から出て来ていった

「坊や いそいで帰ってくるんだ 

 ママがお前に会いたいそうだよ」

ぼくはパパに小声で尋ねた

「それじゃ ママはもう死んじゃうの?」

するとパパは静かに言った

「そうだ 坊や ママは死ぬんだ

 だけど 坊や 泣くんじゃないぞ 

 みんな誰でもいつかは死ぬんだ

 坊や わかるな お前は男だ 

 歯をくいしばり耐えていくんだ

 どんなときでも 弱音を吐くな 

 男らしくやるんだ 頼むぞいいか 

 坊や 約束してくれ」

ぼくはパパに約束をした


ぼくが走って帰ると 

ママは白い顔してベッドに寝てたが

ぼくに やさしく笑ってみせた

「坊や 元気で大きくなるのよ」

ぼくもママに笑ってみせただけど

ぼくは見たんだ

そのとき ママの瞳にうかんだ涙を

ママは ママは 泣いているんだ

そうさ ママは考えてるんだ 

ぼくのことを 心配してんだ

自分が死ぬということよりも 

ぼくのことだけを 考えてるんだ


ぼくは思わず 神に祈った

「どうかママを助けておくれよ 

 ママが死んだら ぼくも死んじゃう

 どうかママを殺さないでよ 

 どうか神さま お願い 神さま 

 どんなことでも ぼくはするから

 夜ねる前に 歯をみがくから 

 ごはんの前に 手を洗うから」


だけど ママはその夜おそく 

そっと淋しく この世を去った

ずっとぼくの手を にぎりしめ 

涙うかべて この世を去った

ムリさ ムリだよ

泣くなといっても ダメだ

そんなの 絶対ダメだよ

だって だって ママは死んだんだ

ぼくは泣いた やっぱり泣いた


ママ

だけど ぼくは ぼくは男さ

そのあくる年 あの戦争で 

パパが死んだと 聞いたときは

ぼくはそのとき 涙をこらえた

ぼくはそのとき 約束まもった







歌詞はこやなぎ名人さんの「きままにダイアリ」から引用させて頂きました。