秀亭 かねろく

私の一押し、いや特押しの魚屋さんです。

「秀亭 かねろく」と言います。 

私のブログの中に、それこそ何度となく出て来るお店です。



私が20歳代の若かりし頃、TBS「花王 愛の劇場」で放送された「越前竹人形」という昼メロのドラマがありました。 (エエ若いモンが昼間からナニ観てたんや・・

雪深い福井県の武生を舞台に、心美しい遊女玉枝と年若い竹細工師喜助の悲恋を描いた、水上勉原作の小説をドラマ化したものです。主演は司葉子さんと柴田秀一さんということでしたが、私の記憶では、なぜか長内美那子さんと宗方勝巳さんでした。

5〜6年前でしょうか、日本海ぞいに美味しいものを探しもとめながら高速道路を走っていました。たまたま武生の標識が目に入り、ふと この「越前竹人形」を思い出して、フラフラと このインターチェンジで下りました。

武生で下りたからって、越前竹人形の何にも触れられるわけでもないのですが、そんなところがいつも行き当たりばったりのduoさんなのであります。

そして、武生の駅前までやって来ました。この辺りの電車は1時間に1本しか走っていません。ところが駅前には客待ちタクシーが結構並んでいます。運転手さんたちは、ロータリーに車を駐めたまま4人5人と集まりその暇な時間を四方山話でつぶしておられました。

ここは越前です。越前と言えば、竹人形はともかく、カニと魚です。早速、タクシーの運転手さん達のつるんでいる輪に入り、このあたりでリーズナブルな(ここが大事!)価格で美味しいお魚を食べさせてくれる一押しのお店はありませんか、とお尋ねしました。

知らない土地で美味しいお店や隠れ家を本で探してもダメ、地元の人に聞くのが一番、それもタクシーの運転手さんなら申し分なし、というのが私の美味しいお店を見つける新庄、ん?SHINJO、いや信条です。スミマセン、日本シリーズ真っ最中なもので・・・

運転手さん達、暫くああでもない、こうでもないと議論をされ、意見がまとまったところで、ある一軒のお店を教えて下さいました。

運転手さんたちの意見が一致したお店、それが「秀亭 かねろく」でした。




さっそく場所を教えて頂き、お店に向かいました。武生駅はホームの西側にしか駅舎がなく反対側には出られません。車で少し遠回りをしながらループ橋を渡って、電車を横切ります。駅の裏側のちょっと離れたところにあるお店です。

お店の近くまで来た時に、私達の前を歩いているカップルがお店の暖簾(のれん)をくぐりました。どうもいっぱいのようです。そのお二人さんは、踵(きびす)を返して出て行かれました。

これは私たちも同じ二人だから、ダメだなと覚悟を決めながらも、入れますかとお尋ねしたところ、ちょっと窮屈なんですが、二人なら入れますとのこと。先ほどの方達は、窮屈なのがイヤだったようでやめられたようです。

ラッキーでした。お陰様でお店に入ることができました。ご縁がありました。そのカップルが入っていたら私たちはもうこのお店に来ることはなかったでしょう。



15〜6人座れるカウンター席とカウンターの後ろにお座敷があり、8人は座れるテーブルが4卓あります。そして2階にも宴会が出来る広いお部屋があり、これが、全席満杯の盛況です。

花板さんはまだ若い<?>(と言っても程度がありますが)大将と、それこそ若いイケメンのお兄さんのお二人、あとは厨房に4〜5人、そして給仕担当の若い女性スタッフが4〜5人で、大女将さんや若女将さんたち全部で15人ほどでこのお店の全てを切り盛りしておられます。

わたし達も初めてのお店ゆえ、何をお願いしたらいいのかも分かりませんので、このお店にたどり着いた経緯と、なにが美味しいのか尋ねながらの第1回目でした。

その後は言わずもがな、このお店の虜になり、このお店の料理を食べに来るためだけに、わざわざ神戸から高速に乗り、宿をとって、土日に一泊二日の日程で年に何度か訪れるようになりました。

マスター(大将)の料理に対する研究熱心さには、驚くものがあり、休み(毎週月曜日と第2日曜日)には、一泊二日で行けるところならどんなに遠くても、美味しいと聞いたお店に足を運ぶ熱心さです。そのひたむきさがこのお店の成功している所以(ゆえん)でしょう。




カウンターの向こうのステンレスの壁に面して、天ぷらを揚げる業務用の大きな2漕式のフライヤーがあります。その回りは壁から機器の縁から床に至るまで飛び散った油と粉でまみれています。もう何日もお掃除していないような汚れ方です。

しかし、閉店後、フライヤーの油を抜き、壁から床から全てきれいに洗い流します。毎日やっているのですが、初めて見た人はビックリされるかも知れません。ビックリすると言えば、天ぷらを揚げる時、マスターはその油の温度を見たり、衣をつけた具材を入れる時に自分の手まで油の中に入れます。

マスターの手は、色素が抜けて真っ白になっており、触ると氷のように冷たい手をしています。長年の調理でそうなってしまったのでしょうね。




魚料理は特に素材にこだわり、地のものを使っていますが、越前のズワイ蟹はまだ解禁になっていません。11月も半ばを過ぎると、この蟹をはじめ、日本海の冬場の美味しい魚がわんさかとテーブルを飾ります。それを考えただけでも、年内にもう一度訪れる機会を作ろうとカレンダーと打合せをしています。


今回私たちが頂いたお料理の写真の一部と「秀亭 かねろく」さんの場所や電話番号を次ページ(↓)でご紹介致します。