「食の安全」・・・ではあるのですが・・・

今日から食品と動物用医薬品、飼料添加物の残留農薬の規制が強化されます。

食品業界は大変です。


これがどんなに大変なことであるのか、いまだにちゃんと把握出来ていない食品会社がまだまだ数多くあります。

農産物から加工食品まですべての食品が対象で、食品ごとに使用農薬が指定され、許容残留基準値が設けられています。

残留基準値が指定される農薬は従来の283品目から799品目に拡大され、それ以外の農薬の残留基準は一律0.01ppm以下に規制されます。今までの規制方法をネガティブリスト制度と言うのに対し、新しい規制はポジティブリスト制度と言います。

食品衛生法の改正は5月29日、つまり本日から導入されますが、この799品目すべての検査方法もまだ確立していません。もともと、急増する海外からの農産物や加工食品に対して対応する目的でしたが、法で括るとすべての食品が対象となります。

国内産の農産物は、リスクを減らす意味でも、この799品目以外の農薬を使うことは先ずあり得ないと思います。しかし、農産物によっては使用農薬と使用量が制限されており、今作っている作物と以前に作った別の作物によって使われる農薬が違えば畑の土壌汚染もありますし、隣の畑で違う作物を作っていると、風の強い日にそこで散布された農薬が飛んできて風媒汚染(ドリフト)されることもあります。

このドリフトの問題は、食品の農薬だけではありません。畑の近くにゴルフ場があったり、花き生産地があると、非食品用の農薬が飛散するケースもあります。



生協やスーパー、加工食品メーカーは、生産者や納入業者から残留農薬検査証明書の提出を求め、尚かつ安全の保証を求めますが、799品目の農薬をすべて検査するとなるとその費用は莫大なものになります。

生産地がほとんど同じものを作っている場合は土壌汚染や風媒汚染は考えられにくいし、検査も農協単位でやれば負担コストも下がるでしょう。

しかし、様々な作物を作る地域の場合は深刻です。その作物に使用していない農薬まで検査しなければなりませんし、その費用はすべて単価の上昇につながります。単独の農家や零細企業ではその費用を吸収できませんし、残留農薬が基準値を超えた場合は原則販売禁止措置が取られます。そして野菜や果樹には保険がありますが、米などの穀類には保険すらありません。

ましてや、輸入品では使用農薬のトレーサビリティ(栽培履歴)を現地から取ることすら不可能な農産物が星の数ほどあります。

例えば、香辛料などはその典型です。種類の多さに加えて生産地域も広く、その上、低開発国からの輸入となると、輸出国から使用農薬と残留農薬の保証をとることは、どうみても無理な話です。そうなると輸入された時点で、その小さな輸入ロットごとに検査をすることになります。

海外では、日本で決めた799品目以外の農薬を使っている可能性もあります。日本で許可されていなくても、その国では認可されている場合もあります。

メジャーな農産物は農薬を指定して、それぞれの残留基準値も設定されていますが、マイナーな農産物は農薬を指定されておらず、指定外の農薬が0.01ppm以上検出されると販売禁止となります。

それらの残留農薬をすべて検査することになると気が遠くなります。いや、はっきり言ってできません。厚労省農水省の見解も微に至っては食い違うところもあります。



食の安全に万全を期すのは当然であり、規制の強化も必要であるとは思いますが、いったい「安全の責任」は誰が負うのでしょうか。これから先、農家を含めて食品業界は新制度に不安を隠しきれません。









一部のイメージを東京マイコープさんのHPよりお借りしました