管理不能

某国の人件費、製造費が安いことから、日本の企業はこぞって生産拠点をその国に移したことは、誰もが知る事実です。

日本の規格を海外に移すことには、農水産品であり、工業製品であり、その技術指導に非常な苦労があります。

技術指導員が相手国の合弁企業へ出向き、つきっきりで一から十まで指導し、やっと日本向けの製品が完成します。

そんなに苦労して作り上げた製品も、指導員が引き揚げて、製造を現地の人間に任せた直後に不良品が積み出されることが往々にしてあります。

これって、なんなのでしょうね。

実は、製品に対する感覚が日本人とまったく違うところにあることと思います。

私が経験した一例をあげてみましょう。

アパレルでは現地から輸入するニット製品に全体の薄汚れや小さなシミがたびたびありました。クレーム(コンプレーン)を出すと、この程度のシミならばアメリカやヨーロッパではコンプレーンがない、これは許容範囲内だといいます。

農産物の時には、現地で加工した冷凍野菜や乾燥野菜、製粉、加熱など二次加工された製品に夾雑物が多く、日本に入ってきてから再度不純物を取り除く作業に追われたこともありました。

現地の労働者層に日本の規格が徹底されていないことが原因です。

先のアパレル合弁会社では薄暗い電気の下で、汚れた手で作った製品を汚れた床に積み上げています。また農産物は水洗いが不十分であったり、天日干しをした場所から土や石ころ、古釘などの夾雑物が混じったりします。

一方、日本の規格に併せるために、上辺だけの姑息な対応をする場合もあります。

例えば、生野菜や魚貝類。

野菜類は虫がついていたら検疫の時点で通関できません。ましてや虫くいの穴だらけの野菜はスーパーでは売れません。したがって日本向けの野菜には農薬をかけまくり、果ては無認可の農薬まで使う事になります。

スーパーに並んでいるトレー入りのエビは大きさがビシッと一定しています。日本のスーパーが大きさを揃えるように指示をしているためなのですが、現地ではサイズの足らないエビはひねってたたいて伸ばします。鮮度を保つために薬品を振りかけることもあります。

曲がったキュウリも市場に出回らない日本の厳しすぎる製品規格、これが現地の悪知恵を煽ることにもつながっているのでしょう。

海外の労働力を使ってものを作ることや、海外の製品の品質を見極めることは、非常に難しいことです。