管理不能 〜もうひとつ

直前の記事で、技術指導員が相手国へ出向き、つきっきりで指導しても、指導員が引き揚げた途端に元の黙阿弥になるお話をしました。

今回、輸入解禁になったアメリカ産牛肉にBSEの特定危険部位である脊柱が混入していた問題でも、先の話に似たところがあります。

日本では食用牛は生後何ヶ月に関係なく特定危険部位の除去が義務づけられていますが、アメリカ政府の強引な圧力のもと、昨年12月に特定危険部位の除去と生後20ヶ月以下であることを確認する条件で輸入が再開されたばかりです。

日米間で取り交わされた日本の輸入条件というよりは、アメリカが政府レベルで、それも書類上だけで輸出再開を取り付けただけだという事実が露呈しました。

輸出再開さえ取り付ければ、あとはどうでも検査合格のシールを貼りさえすれば、通ってしまうという感覚ですね。

アメリカが30ヶ月以下を求めていましたが、日本は20ヶ月以下を主張し、それを通しました。でも、30ヶ月以下であっても、書類に20ヶ月以下と記載すれば分からないでしょう。

それを調べるには、日本にいて書類をながめていてもわかりません。検査官が現地の食肉加工施設において徹底してチェックする以外には方法はないでしょう。

今回輸入解禁にあたって、全米約40の日本向け食肉加工施設のうち、農務省が査察を実施した施設は11ヵ所でした。それも査察であって、すべての工程に張りついて監視しているわけでもありません。

日本向け輸出品に対して日本の農務省の査察官が徹底して、トレーサビリティまで調べて、屠殺するところから加工処理まですべての工程に立ち会い、徹底した査察を実施した上で輸出できるなら問題はないでしょう。しかし、こんなことは不可能です。

仮にそれが可能であったとしても、その査察官が帰国した時点で、冒頭に書いたように、おそらく元の木阿弥となります。

所詮、日米の合意はあくまで机上の約束でしかなく、現実レベルでは、ほとんどまもられることのない取り決めと言わざるを得ないでしょう。