赤ちゃんに乾杯!

最近アメリカで注目されているニュースに、延命装置をつけた脳死状態の女性の出産の話題があります。

国立衛生研究所(NIH)のワクチン研究者だったスーザン・トーレスさん(26)は極めて悪性のがんであるメラノーマ(悪性黒色腫)に冒され、5月7日に突然倒れ呼吸停止となりました。

腫瘍は脳にまで広く転移していることが判明して、ご主人のジェーソンさんと2才の長男にはスーザンさんの脳死が告知されました。



スーザンさんは妊娠17週目に入っており、家族は無事出産できるまで生命維持装置で延命させることを望みました。

集中治療室(ICU)では、医療保険が効かない費用(医療保険適用外費用)が1日約1500ドルもかかるため、ジェイソンさんはテレビを通じて世界に呼びかけました。その苦渋の選択を知った内外の人々からは、これまでに日本も含めて40万ドルの寄付が寄せられたということです。

病院側は当初32週まで待って出産させたい意向でしたが、赤ちゃんが出産後に発育できるギリギリの時期とされる妊娠24週が過ぎた今月2日、帝王切開で女の赤ちゃんを出産しました。

体重822グラム、体長34センチの赤ちゃんは、スーザン・アン・キャサリントーレスと名づけられ、経過は順調だということです。

そして、スーザンさんは、出産の翌日に生命維持装置を外され、息を引き取りました。



脳死の女性による出産例はほかにもあるそうですが、スーザンさんの場合はがんが既に肺などに広がっており、子宮に転移する前に胎児が十分に発育できるかどうかという時間との闘いになっていたため、内外の注目を集めていました。

日本の脳死アメリカの脳死(brain dead)は、基本的にかなり異なるそうです。日本では脳死と判定された時点では余命は1週間から長くても2週間までで、このような長期の延命はあり得ないというお話を聞きました。国が変われば、基準がこうも異なるのですね。

ところでキャサリンちゃん、元気に順調に産まれてきてよかったですね。

意識のないお母さんのお腹の中で、お母さんとお話はできたのでしょうか? 

お母さんの鼓動だけしか聞くことのできなかった赤ちゃん、でもこの命の鼓動が赤ちゃんに伝わり、命の尊さの対話ができたと思います。

生前元気だった頃のお母さんの気持ちが、きっと赤ちゃんに伝わったと思います。

命を大切にして、お母さんの分までも一生懸命生きて下さい。

この育まれた小さな命に乾杯!






写真はスーザン・トーレスさん(提供:CNA,AP=協同)

Catholic News Agency:
Jun. 17, 2005
Jul. 19, 2005
Aug. 03, 2005