深川製 「竜鳳凰錦手黄地杵型細長花生」

ホワイトデーのお返しにデパートへ行ったことは前にも書きましたが、
食器売り場をウロウロしていて実はある花瓶に釘づけにさせられてしまいました。




高さ50cm、直径17cmもある大型の花瓶です。
「竜鳳凰錦手黄地杵型細長花生」と名前のついた
この花瓶の少し深みのある美しい黄色の地と
その黄色を大事にしながら、一部透かしたような
技法で、その上に緑色で描かれた4本指の登り竜、
そして背面に描かれた矢張り緑色の鳳凰、それに
シンメトリーな杵型のデザイン、これらのすべてに
私は魅せられてしまいました。


FI1126823_1E.jpg

中国の明の時代に黄色は皇帝の色として
一般にはその使用を禁じられていました。
深川製磁初代の忠次はこの黄地陶磁器に
デザイン的な工夫を試みました。


FI1126823_2E.jpg

当時5本指の竜は中国皇帝を象徴するもので
皇帝にしかその使用を許されていませんでした。
有田・伊万里ではそのしきたりに敬意を払い、
5本指の竜を作品に描くことはありませんでした。

そんなわけで、有田・伊万里の陶磁器の窯元では
竜の指は4本で描くように申し合わせていましたが
それも時代とともにだんだん守られなくなりました。

しかし、深川製磁では、かたくなにその伝統を守り
今の時代までそのデザインにこだわり続けています。
この作品は当時の忠次のデザインした竜と鳳凰
黄地に重ねて再現したものです。


FI1126823_3E.jpg

また、深川製磁はその陶石に100%天草陶石を
使用しています。今や宇宙船の耐熱材としても
使用され、世界に輸出されている陶石です。

しかし現在に至るまで100%天草陶石で貫いている
窯元は、非常に数が少なく、例えば彼の有名な
マイセンにしてもその一部にしか天草陶石を使用して
いないのが現状です。

デパートの深川製磁のコーナーで、顔馴染みの売場
のお姉さんとそんなお話をしているうちに、ますます
この「竜鳳凰錦手黄地杵型細長花生」の端麗な姿の
虜になり、欲しくて欲しくてたまらなくなってしまいました。

花瓶も私のところに来たがっている、なんて思いはじめると、
もうどうしようもありません。

でも高いんです。これが。
”0”の数があまりにも多過ぎるんです。
があ゛ぁ゛ぁ゛〜〜〜んんん・・・どうしよう。どうしよう。

さんざん迷ったあげく、とうとう買っちゃいました。衝動買いです。
一緒においてあったポップ板から値段票まで一緒にもらってきちゃいました。

家内様のGivencyのバッグよりもはるかに高いものになってしまいました。

当分デパートには行くまい・・・と決めた一日でした。


FI1126823_4E.jpg