中国 と 五輪
「有朋自遠方来 不亦楽乎」
朋あり遠方より来る また楽しからずや
孔子の論語を2008人の役者が繰り返し叫びます。打ち鳴らす銅製の太鼓が光を放ち、カウントダウンが始まりました。二〇〇八年八月八日午後八時(日本時間午後9時)、中国で縁起が良いとされる末広がりの八を並べた時間にいよいよ北京五輪が開幕しました。
1964年の東京、88年のソウルに続くアジアで3度目の北京五輪は参加国と地域が史上最多の204となりました。かつてない約80カ国の首脳らを迎えた歓迎式典の席で、胡錦涛国家主席は「中華民族百年の夢」と宣言、中国の威信をかけた一大政治イベントが始まりました。
経済発展が著しい中国を内外にアピールした胡錦涛主席ですが、大気汚染に霞んだ北京の空は地球温暖化の対策すらなされていないことを証明し、農薬問題や冷凍ギョウザ問題で世界を震撼させており、先進国のレベルにはほど遠い状況です。
五輪がもたらす特需で経済発展を伸ばし続けてきた中国経済ですが、五輪が始まった今、更なる需要は期待出来ません。さらにアメリカ経済の減速を受けて外需が急速に悪化しており、この五輪を境に好影響を与えてきた中国経済は今後先行き不透明感が増して急減速すると考えられます。事実、五輪開会式当日の上海株式相場は急落し、景気の下ぶれへの懸念は一気に表面化しました。
こんな状況の中の中国は国際政治の舞台では国連安全保障理事会常任理事国という立場を利用してあたかも「大国」であるかのように振る舞っていますが、一方国際経済社会では、未だに「発展途上国」であることを主張しています。このようなどちらつかずの態度は今後も相変わらず続くのでしょうか。
世界各国でチベットの独立問題や人権問題など抗議活動が相次ぐ中、平和の祭典であるはずの五輪が、テロを警戒しての最高レベルの厳戒態勢が敷かれた異質な冷気漂うなかでの開幕となりました。
中国の「大国」を誇示する外交政治は五輪というスポーツの祭典を利用して大きく発展するかもしれませんが、「途上国」としての中国経済は果たしてどうなることでしょうか。
そんな中国の政治・経済を心配することよりも、純粋にスポーツとしての五輪大会が世界の平和の祭典として大いに盛り上がり、成功してほしいものです。
ちょっと豆知識
中国語でオリンピックは、「奥林匹克」と書くらしいですが、日本語で夏季五輪の正式名称を言えますか?
答えは「オリンピアード競技大会」です。
近代オリンピックの第1回大会は1896年のアテネ大会で、フランスのクーベルタン男爵が提唱した「スポーツを通して心身を向上させ、平和でよりよい世界の実現に貢献する」ことを目的としています。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
余談――
開会式を見ていてちょっと気になったことは、福田首相の態度です。ブッシュさんもサルコジさんもプーチンさんも、多くの国家元首が自国選手の入場行進で、立ち上がって拍手やエールを送っていたのに対し、福田首相は、座ったままで立ちあがろうともせず、夫人と話をしながら扇子を取り出してあおいでいました。
ちょっと立ち上がってエールを送ってあげればいいのにと、この人の配慮のたらないイヤな性格を見たおもいです。
写真:時事通信提供