災害 人はなぜ逃げない 〜日経新聞サイエンス欄より

3月最後の日に、大阪淀川の河川敷で大変な放送が流れたそうです。

 大阪府津波警報が発令されました」
 「河川に近づかないでください」


こんな放送が10時すぎから、防災スピーカーが設置されている淀川下流一帯8ヶ所で1時間にわたって流され、その内5ヶ所では電光掲示板に「津波」の表示も出たということです。

地震の情報がないことを不審に思った近所の住民の問い合わせで誤作動が判明しましたが、土曜日で国土交通省淀川河川事務所は閉庁日のため担当者がおらず、停止に時間が掛かったそうです。


この誤報で近くの住民はどんな行動を取ったのでしょう。


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折しも4月1日付の日経新聞のサイエンス欄に『災害 人はなぜ逃げない』という記事が出ていました。

 子供「津波警報だよ。逃げようよ」
 親 「いっぱい人が避難したら逃げよう」
 子供「うちは大丈夫かな」
 親 「来るわけない」


去年11月15日千島列島沖の地震(M7.9)で住民に避難指示が出た岩手県釜石市でのほとんどの家庭の会話がこうだったと群馬大学の片田敏孝教授は調査の結果を伝えています。

人はなぜ逃げないのか。

正常性バイアス」が働くからといわれています。また「正常性バイアス」は「多数派同調」と「認知的不協和」という心理によって強められるといいます。

 正常性バイアス」とは、非常事態に直面してもそれをできるだけ正常なことと理解しようとする心理

 (例)自宅や職場で火災報知器が鳴ったとき、多くの人は故障かいたずらだと思ってしまうようなことです。
 
「多数派同調」とは、回りの人が異常を感じていないかのように振る舞うと、それにつられて逃げないでいる自分を正当化しようとする心理

 (例)韓国大邱市で起きた地下鉄放火事件で、放火された列車の反対ホームの車両乗客が煙りが車内に入ってきたのにじっと座っていて逃げ遅れたのは、この心理が働いたと分析されています。

「認知的不協和」とは、過去の経験に照らし合わせて不都合な情報を遮断したり過小評価したりするという心理

 (例)2004年の台風23号で市街地の8割が浸水した兵庫県豊岡市では市民の7割近い人が危険を感じたけれど「二階に避難すれば大丈夫」と過小評価をして50%の人は避難の必要性を感じなかったといいます。


じゃ、どうすればいいの? 


逃げない人たちは災害の危険性はわかっていても、それが自分にどう降りかかってくるのか理解していないので、まず重要なのは 災害の危険性を十分に認識させること だといいます。

片田教授は、もし東南海・南海地震が起きたとき10分以内に逃げないと津波に巻き込まれるというシミュレーションソフトを作成して、尾鷲市で市民に示したところ、高台に逃げる道順を日頃から確認するようになったといいます。

また、危険だから避難するというだけでなく、「避難しないと他人に迷惑をかける」という説得が有効と説くのは京都大学防災研究所の矢守克也・准教授です。

地域ごとに住民に避難を呼びかけるリーダーを置けば、多数派同調を防げると言っています。


この記事を書かれている青木慎一記者は、現代人は危険が少ない生活に慣れて『安全ボケ』の状況にあり、これが正常性バイアスを助長していると言っています。


教訓:
 
災害を自己判断で過小評価をせず、回りの人に感化されず、シミュレーションなどで事態の進展のスピードを熟知し、間違った過去の経験に判断を誤らないようにしましょう。