二科展 〜写真部門によせて

若い頃に、ある名の知れた写真クラブに所属していた関係で、今でも写真展には興味を惹かれます。この写真クラブからは、当時の友人・諸先輩の多くの方が二科会写真部の会員・会友になっておられます。

その中の会員である友人の一人が、有難いことに毎回欠かさず大阪市立美術館で開催される二科展の入場券をわざわざ送って下さいます。

私自身には納得できるような作品を撮影する技術は殆どなくなりましたが、昔取った杵柄(きねづか)で、作品を鑑賞する知識だけはかろうじて忘れることなく持ち続けているつもりです。

その曲がりなりの古い知識から、今回の二科展に思うところゆえ、逆にご批判を受けるかも知れませんが、最近の、特に今回の二科の作品からは数点を除き、目を見張るような大作を見いだすことは出来ませんでした。

海外に題材をもとめた作品は相変わらず多く、花鳥風月に至っては、デジタル撮影したものも目立ちます。

また、デジタル部門と断ってはありますが、その作品の内容は、写真部門であるよりも、むしろ写真技術を採り入れたデザイン画の一部門として展示される方がふさわしいのではないかと思うほどです。

そのデジタル部門と断ってあるものは別にしても、一般作品の一部にもデジタル処理を施した作品が横行しており、中には昔からのフィルムカメラ写真技術と見間違うほど精巧に駆使された作品から、いかにも細工をしましたと言わんばかりの技術不足の目立つ作品に至るまで並んでおり、これも時代の流れかと感じた次第です。これからの写真全体がこういうデジタル風潮に変わっていく過渡期であるのかもしれません。

そんな中、一般公募の作品の中には、何点か目を引くすばらしいものも見せて頂きましたが、全体的に二科の写風には、昔持ったような感動を得られなくなりました。

むしろ逆に二科を引っ張る側の会員・会友の皆さんの作品には、これと言った斬新さがほとんどみられず、むしろその内容にはいささかガッカリした感はいなめません。

一愛好者としてこんな大それた事を申し上げるのは失礼そのものであり、生意気とお叱りを受けるかもしれませんが、伝統のある二科の格式と価値を高めるためにも、会員・会友の皆さんの今後なお一層の努力を注いで頂き、素晴らしい作品の出展を期待するところであります。