トヨタ 〜 減益 と 内部留保 と 人員削減

22日

トヨタ自動車は22日、2009年3月期の連結営業損益の予想を、従来の6000億円の黒字予想から1500億円の赤字に下方修正しました。前期(08年3月期)は過去最高の2兆2703億円の黒字でしたが一気に2兆円以上利益を減らすことになります。

渡辺社長は、海外で予定していた工場の新設や拡張をほぼすべて延期もしくは縮小すると表明、翌年の生産・販売計画も公表を見送りました。

今期の役員賞与も支給しないといいます。



23日

トヨタの営業赤字は記録が残っている1941年3月期の決算以来初めてですが、この翌日、渡辺社長が来年春に退任し豊田章男副社長が社長に昇格することが濃厚となったというニュースが流れました。

創業家回帰は実に14年ぶりのことで、チームの中心に旗印の豊田家出身者を据え、百年に一度といわれるかつてない世界不況の緊急事態を創業家の求心力で乗り越えたいというのが狙いらしいです。

ただ、社内には「世襲」に対して、若手社員から「正当に能力が評価されない」という意識が生まれ、やる気が低下するとの批判的な見方もあります。




24日

そして昨日、24日に発表した11月の世界販売台数(グループのダイハツ工業日野自動車を含む)は、前年同月比21・8%減の61万8千台、トヨタ単体で23・8%減の54万4千台と、いずれも4カ月連続で前年を下回りました。前年同月と比較した下落率は、データが残っている2000年1月以降の単月で過去最大の下落幅です。




そんな中、24日の東京新聞トヨタ自動車内部留保は2001年度末には6兆7000億円だったのが2008年の9月末には12兆3000億円とおおかた2倍に膨らんでいると記事がありました。

過去の好景気による利益が人件費などに回らず、労働者への還元が不十分なまま企業内部に温存したままため込まれ、業績が不透明になり危機に直面した途端、派遣切りなど安易に人減らしに頼っていると派遣社員などで組織する労働組合は批判しています。

内部留保とは、企業が税引き後の利益から配当金や役員賞与などの社外流出額を差し引いて、残余の利益準備金、剰余金、その他の包括利益等を企業内に留保することを言います。



共同通信社の集計によると、調査対象はトヨタだけではなく自動車7社とキャノンなど電機・精密9社で、この大手製造業16社は大規模な人員削減を進める一方で、内部留保は空前の33兆円に上るということです。(右図参照)

阿部正浩独協大学教授(労働経済学)は、内部留保がこれだけ積み上がった背景には市場の圧力があるといいます。神戸新聞にあった阿部教授のお話を記事の下に囲みで記載しました。



2008年度3月期の東京証券取引所一部上場の金融を除く企業の経常利益は過去5年間連続で伸びていますが、一方従業員の賃金は低迷しています。

その原因は雇用分野における規制緩和派遣労働者の対象が拡がったことにあり、その結果派遣労働者が増加したことにあります。今や派遣労働者は全体の約3分の1を占める時代です。

企業が派遣労働者の雇用を増やす主な理由は2つあります。

1つは賃金を低く抑えることができるということです。そしてもう1つはいつでも解雇出来ることからです。企業は派遣労働者の契約期間を極端に短く設定して契約期限ごとに更新を繰り返し、企業の浮き沈みに合わせて労働者の人数の調整を担う役割を求めています。今回のように経営が悪化すると一方的に契約を打ち切ります。いわゆる派遣切りです。因みにトヨタの人員削減は5800人にも上ります。

企業は最初からこの2つを念頭において派遣雇用を増やしていったのです。

契約期限がきた派遣労働者期間労働者は、企業とその都度書面にて契約を交わし直してている場合もあれば、自動的に更新を繰り返している場合もあります。自動的に更新する場合は期間の定めのない契約と同じとなり、企業の倒産や経営の悪化など合理的な理由がないと契約の打ち切りが無効になる場合もあるそうですが、いずれにしても厚生労働省は今ここにきて安易に派遣労働者を容認し、規制緩和までして拡大してきたツケがまわってきたということなのでしょう。




 . 阿部教授の話
 1980年代までは企業が赤字になってもメーンバンクが資金繰りを支えてきた。仕事が無くても解雇はせず「社内失業」の形で雇用を維持した。しかしバブル崩壊で銀行の体力が落ちメーンバンク制度は事実上崩壊。財務状況や利益体質が厳しく点検される市場で資金を調達するケースが多くなった。

 かつては経常赤字が2期連続の場合に初めて人員整理が検討されたが今は赤字が確定しない段階で各社、雇用に手を付けている。市場の圧力が背景にある。内部留保がこれほど積み上がったのは経営者の能力不足とも見ることができる。全社員の生活水準維持向上は企業の優先事項ではなくなった。